命がけの仕事

自衛隊のイラク派遣が行われていた頃、その支援活動に志願する人達からご相談を受けました。
今までの日常とは掛け離れた世界に行くのですから、
不安を抱いてもまったく不思議ではありません。
志願する彼らの心中には、当事者にしか実感できない切迫したものがあったのだとと思います。

多かったのは、「志願した方が良いか?」
「志願するつもりだが、それで良いか?」という確認。
「志願したが運勢は悪くないか?」「無事帰国できるか?」 と将来の安否を問う声もありました。
派遣への志願は既に覚悟が決まってのことですから、
運が良いか悪いかで気持ちが揺らぐというものではないのだと思います。
実際、皆さん決断前も後も、戦場での生活や万一の事態、
それらを心配する家族の想いなど様々なことに思いを巡らせ、
とりとめのない気持ちを持て余していらっしゃいました。
そのようなことから察するに、もっとプライベートな心配事がたくさん心にあって、
収拾がつかなくて、取り留めもなく話したいのが本音なのだと思います。
ですから、それを聴く良き話し相手になることが、私に求められている役割なのだと感じました。

私にとって彼らからのご相談は、戦争という未体験の問題を間接的に考えさせられる 難しいご相談でした。
内心は震えるほど怖かったことを思い出します。
「国家再建支援」という名目ではあっても、戦地に赴くわけですから 相当の覚悟が必要です。
死のリスクを考えるような、過酷な精神状態ある人からは、並々ならぬ緊迫感を感じます。
このような局面を経験しなければならない人生を、想像しようにも想像が及びません。

私の言葉が彼らにどう伝わるのか…。それが解らず苦しみました。
どんな仕事にも"一生掛かりの課題"と思えるようなものがあると思います。
私にとってそれは、人の気持ちを想うことです。
決して分かち合えない人それぞれの感受性に、いったいどうやって心を寄せれば良いのか?
未だ答えを模索しているのです。



文・構成・編集 : MONDO / 取材協力 : 采慧(サキ)




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