心の重さ

私のお客様の中には、精神科の医師や看護婦、心理カウンセラー、
メンタルコーチングの専門家など、心の問題を扱うプロの方もいらっしゃいます。
以前相談にいらした女性カウンセラーは、仕事に疲れてしまった、と仰るのです。
日々深刻な問題を扱っていれば、精も根も尽き果てることもあると思います。

ご自身がお疲れでは、人を癒すことはできないでしょうから、
まずは心身ともに休養が必要ではないか、と心配すると
「私の仕事は、そんなに生易しいものじゃないんですよ!」と睨みつけられました。
私にも、それは分からない訳ではありません。
しかしご相談にあずかる者が健やかな状態を保てなければ、
人の問題を受け止めることはできません。
「人の心は重たいものですよ。カウンセラーは、
人の心と自分の心を同時に支えながら仕事するのです。
その重みに耐えきれず自分が倒れてしまったら、
クライアントも支えを失ってしまいます」とお伝えしました。

彼女の心が重いのは、クライアントが彼女に心を預けているからなのです。
もしクライアントが自力で立ち上がれない状態ならなおさらのこと、
相手を支えるどころか、大きなダメージを与えてしまう恐れだってあります。
ですから、"過ぎたるは及ばざるが如し"と心の荷を少しでも軽くして、
前を向いてまず自分自身が立ち上がることが大切なのです。
「頑張り過ぎないで下さい」という一言に、やっと微笑みを返して下さいました。



文・構成・編集 : MONDO / 取材協力 : 采慧(サキ)




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