世のため人のため…

お金が欲しい人は、世の中に溢れているものです。
ある年末に頂いたご相談は、良くある「くじ運」を知りたいというものでした。
「世のため人のため、恵まれない方々に寄付をしたいと考えております。
宝くじの予想鑑定をお願い致します」とご依頼頂いたのですが…。
ボランティアは、自分の出来る範囲内で行えば良いという考えは、
この方には受け入れられないご様子。
「私は、できるだけ多くの人々をお救いしたいのです!」と必死に訴えるので、
「占いますが、万一、くじ運があったとしても直ぐに当たるとは限りません。
当選まで何年もかかるかもしれませんし、当選しても高額である
保証はありません」とご説明すると、無言で電話を切ってしまわれました。
時には、このような後味の悪いお電話もあります。

ちなみに、くじ運はすべての人にあるわけではありません。
また、たとえあったとしても、
高額当選する保証はまったくありませんし、
購入するのに良いタイミングがありますので、
それに合わせて長期的に、根気強く買い続けていく必要があります。

この電話を終えて、そう言えば私は"世のため人のため"と考えたことはないな
…とふと思いました。
目標として"世のため"と掲げるのは、個人的にとても違和感があるのです。
仕事柄、人のお役に立てた時はもちろん嬉しく思います。
ですが、私は占い業もボランティアも、あくまで自分がしたいことを、しているに過ぎません。
今まで出会ってきた人々が、
世のために身を挺することの尊さを教えてくれましたが、
本当に真似のできないことだと思います。
"世のため"と言われる行為とは、私にとっては壮大なものであり、
生半可な覚悟でできることではなく、
簡単に口にすることもはばかられる想いです。

前述のエピソードのように様々な人生に出合い、何かを気付かされるということは、
鑑定業の醍醐味の一つであり、収穫です。
人々の人生観に触れ、自身を顧みることができることは、私の人生に
大きな恵みをもたらしています。
たとえ後味が悪いことがあっても、自分にとって無意味な仕事など
ないのだ、と気持ちを切り替えることができるのも、素晴らしい収穫の一つといえるかもしれません。



文・構成・編集 : MONDO / 取材協力 : 采慧(サキ)




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